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上部頚椎について 1

上部頚椎について考えてみたいと思います。上部頚椎はターグル・リコイルテクニックのアジャストメント対象です。

「新図説整形外科講座3 頚椎・胸椎・胸郭(メジカルビュー社 1994/06)」のP11に頚椎の筋肉系と言う部分がありますが、そのまま引用すると、・・・・

頚部の筋は3群に大別される。すなわち、頭及び頚自体の動きと固定に関るもの、上肢帯のつり下げと動きに関るもの、胸郭のつり下げと動きに関るものである。
頚部諸筋の働きとしては動き以上に頚椎の安定性に関る働きが重要である。重い頭蓋が頚椎の上にあって安定した姿勢を保つには、頚部諸筋の絶えざる緊張弛緩によるバランスの保持が重要と考えられている。頚部諸筋には極めて豊富な神経終末があって求心性インパルスを出し、それは首の安定保持のみならず、全身の姿勢制御にも影響する。このことは緊張性頚反射の存在やアテトーゼ型脳性麻痺で頚部を良い位置に保持するとADL訓練に好ましい影響を与えることなどからも知られる。後頭下筋のspindle popualtionは1g筋量あたり29.3~42.7に達し、骨格筋中でも最高グループに属すると言われている。この値は例えば四肢筋中spindle popualtionの高い手の虫様筋の16.4より高く、腹直筋(2.25)とは桁違いに多い。

・・・・と記述されており、これから推論するに、Occ-C1-C2関節自体がジャイロ状に動かなければ、意味がない機構のように思われます。つまり、OccとC2の間でC1は小さな範囲で自在に動くのではないか・・・ということになってしまいますが・・・・・
大後頭孔magnumから延髄脊髄部が出ている以上、後頭骨環椎間での過大な動きは致命的でしょうから、強靱な靭帯で抑制され、関節の構造も楕円関節ですので運動範囲は極めて限局されるわけですが、この範囲内で側屈の動きを考えた場合、靭帯は基本的に伸びることが抑制される構造物ですので、片側のcondylが落ち込むだけで、反対側のcondylの外側への滑りが靭帯の伸展許容範囲内での側屈は可能であると思われます。
後頭環椎関節の関節包がゆるいことは、「日本人体解剖学1」のP269にも記されております。靭帯の伸展許容範囲については文献が見当たりませんでしたが、生体でのものでなければ意味がない(通常解剖献体はタンパク固定されているか、冷凍保存されています)ので、ないかも知れません。
回旋に関しては、一方のcondylが前方(伸展)に行く時、他方が後方(屈曲)に行けばいいわけで、純粋水平回旋は不可能であろうと思われますが、同じく顆状関節である橈骨手根関節におけるねじり回旋のような状態は可能であろうと思われます。もちろん、いずれの側屈・回旋運動も遊びの範囲を出ないものと言えるでしょうが、この部分での多方向への微細な可動性の無さは、人体のように頭部が重く頚部諸筋が弱い場合、生体防御上(耐衝撃性)でも致命的な欠陥になるのではないかと思われます。僧帽筋や胸鎖乳突筋のようにある程度大きな筋肉であれば、体重の7〜10%ほどの重量を持つ頭部を支えて動かすことはできるでしょうが、後頭骨・環椎・軸椎に付着する後頭下筋群で運動の微調整くらいしかできないと思われますし、前述したように後頭下筋のspindle popualtionが非常に高いことを考えると、後頭下筋は運動より知覚を担っていると思われます。

「図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編(協同医書出版社 1986/8/1)」のP138には「Sappeyによれば;環椎後頭関節の表面は球の一部であり、近接した後頭顆は頭部を形成し、関節窩は凹面をなす。また人間のこの関節は大きな可動性を有する鳥の頭のような独特な球関節を想像させる(下記画像)」とあり、以後に翼状靭帯による制動機構のための可動抑制が記されておりますが、このような形状のものをいきなり屈曲伸展のみ可能な関節機構であるとするのはいかにも乱暴のように思われます。確かに粗大な意味での可動性ならばないのかもしれませんが、運動を制限するシステムがあるということと、その運動性が皆無であると言うことは同義でないと考えられます。

また、画像のように二つのボウル (bowl) を重ねたような形状の場合、上のものがそれなりの質量を持っていれば、上側のボウルの中心は、下側のボウルが水平であれば、その中心に落ち込むようになって安定します。
上部頚椎のアジャストメントは、後頭骨の受け皿になっている環椎のボウル形状の位置を水平に戻すためのものとも言えます。これにより、後頭下筋群の緊張を初期状態に戻し、脊柱全体の安定性、追従性を取り戻し、ひいては全身の重心移動を正常化しようというアプローチとなります。