Henry Knowles Beecher(1904〜1976, ハーバード大学麻酔学教授)も痛みの研究のパイオニアの一人であり、鎮痛薬のプラセボ効果を科学的に研究した。
「強力なプラセボ The powerful placebo. 」(JAMA;159,1602,1955)
BeecheとLasagnaが、術後痛の治療について、プラセボとモルヒネ(10mg/50kg)を比較する研究を行った(162人)。
全ての患者に、モルヒネとプラセボを投与したが、半数は最初にモルヒネを投与し、2度目にプラセボを投与した。残り半数は最初にプラセボ、2度目にモルヒネをを投与した。
最初にモルヒネを投与した患者では、2度目にプラセボを投与しても鎮痛効果があった。
対照的に、最初にプラセボを投与した患者では、2度目にモルヒネを投与しても、効果が充分ではなかった。
ビーチャーは、このデータ−を元にプラセボはモルヒネの50%近い鎮痛効果があるとの結論を導き出した。
しかし、プラセボに鎮痛効果があるということだけではなく、明らかに、患者の期待が最初の注射経験によって作られることがわかる。
第2次世界大戦中に重篤な外傷を受けた兵士たちの4分の3は、モルヒネ投与を受けなくとも疼痛を訴えなかった。
平時外傷患者150名では約8割がモルヒネを要求した。
「人間の主観的痛みというのは、心理的要因によって変わりうる」という臨床的な観察をもとにした。
その後、Beecherは、人を対象とした研究を批判し、患者の権利を訴えた。
(「Ethics and Clinical Research」The New England Journal of Medicine 274:1354-1360, 1966) →参考http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/refhoshino/hoshino0055.htm
1978年のJon Levineは、プラセボ効果が単に示唆や暗示効果による不安の減少だけではなく、生化学的変化を伴うことを示した。
抜歯後の患者を対象にプラセボを処置すると、患者の主観的な痛みは軽減された。その2時間後にナロキソンを投与すると、この鎮痛効果が消失した。
つまりプラセボ効果は、単なる「思いこみ」などではなく、オピオイドと同じように作用をしたこととなる。
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-placebo.html
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上記HPではプラセボでもかなりの鎮痛効果を見せていますね。
しかも、生化学的な変化も見せるわけです。
当然、鍼灸等によっても生化学的変化が起きていると考えるのは妥当でしょう。
>薬の判定ではなく、痛みの判定にプラセボを使ってはいけない。
>プラセボにも鎮痛効果が認められるので、心因性疼痛の判定にプラセボを使ってはいけない。
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-placebo.html
・・・と言うことになっているようですが、多くの代替医療は鎮痛が治療の主体になっているのではないでしょうか。