62歳以上の高齢者の体温は50歳以下と比べるとおよそ0.2℃以上低くなっていると言われています。また、室温など環境の変化に対して影響を受けやすくなっています。夏や梅雨時などの湿度が高い時には体内温が40〜42℃以上に上昇し熱中症になりやすく、冬など早朝に低温状態でいると体内温が34〜35℃以下に低下して低体温症になりやすいようです。
この原因として考えられることは、老化にともなう代謝機能や循環機能の低下が挙げられますが、私は以下の要因が大きいのではないかと考えています。
一つには皮膚機能の低下です。これは発汗作用などではなく、単純に皮膚が薄くなる事によるのではないかと思っています。
余談ですが、高齢者の皮膚は非常に薄くなり、ちょっとこすっただけで紙のように破けてしまうことがあります。医療用語ではスキンテアなどと言われますが、皮膚が擦れて破けた場合、たいていは皮下に血が固まってしまうのですが、これを取り除き、ストリ・ストリップのようなスキンクロージャー(皮膚接合用テープ)でピッタリ合わせて固定すれば1週間程度で生着します。皮膚を取り除いた場合1ヶ月くらいかかります。
さて、皮膚が薄いことで毛細血管に流れる血液が外環境の変化に影響されやすくなります。これにより、体内温度が変動しやすくなると思われます。
もう一つは筋肉の発熱量の低下が考えられます。加齢や疾患などで筋肉量が減少することをサルコペニアといいますが、全身的に筋力が低下してしまいます。老化である程度筋肉が落ちるのは仕方ないことなのですが、筋肉自体は負荷をかければ何歳であってもある程度強くなっていくものです。要するに高齢者になる以前から筋肉を使うことが圧倒的に少なくなってしまうことが問題であろうと思われます。
また、寒いところで発汗を伴う運動をすると筋肉自体の安静時の発熱量が増えるようです。今は冬ですが、この時期に寒くない服装で外で発汗を伴う運動をすると寒さに強くなります。ただ、ジョギングのような運動ではダメで、ダッシュとか階段を駆け上がるなどの少し負荷の強い運動を短時間行う方が筋肉が活性化してくるようです。
通常、寒いと筋肉はふるえによって熱を産生するのですが、寒いところで防寒を十分して運動することで、顔や手先、足先はそれなりに冷たいので脳には寒冷刺激が入ります。これに対して運動により発汗することで通常よりより強く筋肉が発熱するように作動するのではないかと思われます。この状態を継続することで筋肉は熱を効率よく産生するように機能していくのではないかと思われます。結果的に普通の体を動かす日常動作でも十分に熱を産生できる筋肉になっていくのではないかと推測されます。
高齢者の場合、血圧や持病の問題などがありますので、一概には勧められないのですが、人体には生きているかぎり、このような機能が存在しています。
カイロプラクティックでは、これをイネイト・インテリジェンスと呼んでいます。