>EBM(根拠に基づいた医療)で検証されるのは、「ある治療法の理論や効くメカニズム」ではなく、シンプルに「その治療法に効果はあるか、副作用はないか」です。
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>代替医療側の人の反論がほぼすべて「科学で解明できないこともある、でも現実に効く人がいるんだ」になっていますが、EBMで否定されるということは「理論やメカニズムは知らないけど、とにかく実際にやっても効かないことが実証されちゃったよ」ということですから、それでは反論にならないわけですね。
http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20100301/1267416089
例えば上記の例ですが、>EBMで否定されるということは「理論やメカニズムは知らないけど、とにかく実際にやっても効かないことが実証されちゃったよ」ということ・・・・となっております。
しかしながら、精確には「EBMで否定されるということは「理論やメカニズムは知らないけど、とにかく【特定の条件下では】実際にやっても効かないことが実証されちゃったよ」ということですね。
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リンドは環境と食事という変数を変えてみることにより、オレンジとレモンが壊血病を治療するための鍵になることを示した。この試験の対象となった患者の人数はごくわずかだったが、結果はあまりにも鮮明だったので、リンドはこの結果に確信をもった。もちろん彼は、オレンジとレモンにビタミンCが含まれていることも、ビタミンCがコラーゲンを作るために必要な成分であることも知らなかったが、それはここでは重要ではない。なにより重要なのは、彼の治療によって患者が良くなったことだ。医療においては、治療の有効性を示すことが最優先とされる。基礎となるメカニズムの解明は、のちの研究にゆだねればよい。(P32)
代替医療のトリック(サイモン・シン著, エツァート・エルンスト著, 青木薫訳)
—————引用終り——————-
上記の事例があっても、壊血病が駆逐されることはありませんでした。
—————引用始め——————-
1753年にイギリス海軍省のジェームズ・リンドは、食事環境が比較的良好な高級船員の発症者が少ないことに着目し、新鮮な野菜や果物、特にミカンやレモンを取ることによってこの病気の予防が出来ることを見出した。その成果を受けて、キャプテン・クックの南太平洋探検の第一回航海(1768年 – 1771年)で、ザワークラウトや果物の摂取に努めたことにより、史上初めて壊血病による死者を出さずに世界周航が成し遂げられた逸話は有名である。
しかし、当時の航海では新鮮な柑橘類を常に入手することが困難だったことから、イギリス海軍省の傷病委員会は、抗壊血病薬として麦汁、ポータブルスープ、濃縮オレンジジュースなどをクックに支給していた。これらのほとんどは、今日ではまったく効果がないことが明らかになっている(濃縮オレンジジュースは加熱されていて、ビタミンCは失われていた)。結局、おもにザワークラウトのおかげだったことは当時は不明で、あげく帰還後にクックは麦汁を推薦したりしたもので、長期航海における壊血病の根絶はその後もなかなか進まなかった。
ビタミンCと壊血病の関係が明らかになったのは、1932年のことである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/壊血病
—————引用終り——————-
このように「ある療法に効果があるかどうかは、特定の条件下でしか確認できない」と言う事実をきちんと把握してもらいたいものです。
まあ、科学の素人を騙すのはEBMだとか、科学的客観性などと言えば簡単なのでしょうが、結局のところ「科学で解明できないこともある、でも現実に効く人がいるんだ」という反論に対して、その【現実に効いた時の前提条件を再現できない以上】EBMは何の反論にもならない【無責任な一般論】ということになってしまいますね。
この【一般論=個別特定の事例に特化しない、全体に共通する構造などを概括する議論】としてのEBMは、現代医学の有効性を追究するために設計されているものですから、人体概念を異とする「代替医療」の有効性を単純に証明することは不可能です。
なぜなら、「代替医療は個別特定の事例のみを相手にしている」からです。
また、現代医学の手法で有効性を証明されたとしても、代替療法の本質的な有効性の証明にはなりません。
例えば、カイロプラクティックの有効性の証明が急性腰痛症などに限局していることなどをみてもあきらかです。
カイロプラクティックは本質的に腰痛を治療しません。
特定の病気のために設計されたカイロプラクティック治療はありません。
イネイトインテリジェンスという人間が本来持っている生きるためのシステムにサブラクセーションという異常が生じ、それをアジャストメントすることで生きるためのシステムが本来の働きを取り戻すことで人体の問題が除去されるわけです。
つまり、腰痛を寛解させるために治療をするのではなく、システムを正常化させる治療の結果として腰痛が緩解することがあるということです。
これは鍼灸においても同じでしょう。
端的にはその時点での患者さんの気の流れを正常化するという事を行うわけで、結果として病気が治るわけです。